伊弉諾 雫 作品集

散文詩・エッセイ・批評・考察・論評

全部ウソ

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疑り深い君が言う。


「全部だよ、全部欲しいんだよ」


黙ってその小さなカラダを引き寄せて、抱きしめた。



「うん、俺もだよ、同じだね」


そう答えながら、一つだけ、ウソをついた。




「君にサヨナラだけは言われたくない」




そんな、「全部」、の中に入ってる怯えだけは、


どうしても、言えない、言えなかった、あの日から…




「ぜーんぶ、ウソ」と笑い泣きして去る君をみて、




あのときの「全部」の中に、僕と同じものも入ってたのかな?


最後の「ウソ」もどこまでが「全部」だったのかな?




全部ウソ、って、もっと早く、言えたなら、もっとお互い、欲張りになれてたのかな?




君の背中越しに揺蕩う黄昏は、圧倒的な美しさで君を包み、


ただ、僕だけを疎外していた…


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