伊弉諾 雫 作品集

散文詩・エッセイ・批評・考察・論評

終わりを知ってるから

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安らかな寝息を立てて眠る君


不意に寝顔がゆがんで見えた


「ナイテイルノカ…」


頬を伝う、温かい雫を、拭う気になれなかった




この柔らかな想いは、悲しみなのか、満たされているのか


2人の時間を代償に得る暮らし


疲れた心にも還る場所がある


雫が胸の奥に沁みて、固いものがほどけてゆく





心を許すこと、許されることが怖いのに


胸に拡がる穏やかさに委ねて


感じるままに、髪を撫でてみる





わからなくなる、柔らかな想いが、悲しみなのか、満たされているのか


溢れてくるんだ、頬を伝い続ける雫と同じだけ、分かり合えたつもりで、


終わってしまった、いくつもの過去が





もう、瞳を閉じよう。


とりとめもなく、溢れ出る想いが、柔らかい、ということだけでいい


それだけでいいんだ。




そのまま溢れさせておけばいい、いつかは、終わってしまうのだろうけど


終わりを知ってるから、できれば最後まで、柔らかな心のままでいられればいい


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