伊弉諾 雫 作品集

散文詩・エッセイ・批評・考察・論評

夢幻の月

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もう、何もかも、洗いざらい、捨ててしまいたい


教えてほしい、何故にこうもはぐれゆく


ただ、冷たい風を避けてきただけなのに



分かち合えるものなど、初めからない、と、わかっていた


わかっていたのに、誘わるままに、心許して、心失う



この絆を育むためなら、何もかも、洗いざらい、捨てても構わない


教えてほしい、君は何故、前だけを向いて、先を急ぐの?



心の還る場所にしようと、二人で育む絆を求めた


じっと佇み、もがく俺の姿を、取るに足らない弱さだと


君は一瞥をくれて外を見ている



君の存在は俺にとって、雨に濡れるような裏切りとなった


教えてほしい、君は俺の中に何を求めていたの?



もう、終わらせよう、分かち合うものなど、初めからなかった


絆が愛と呼べるまで、じっと育てることなど、人波の中ではただの気狂い




よくわかった、何故、二人の心がはぐれていくのか


組立終わったものにしか、君には価値がないのだと




俺に価値があったとすれば、冷たい風を避ける風除けの役割と、


飽きるまでのひと時でも、味わえるだけの、血肉で育てた心を収穫できることくらい




同じ月を見ていた気がしていた、それは確かに同じ月だった


ただ、こちら側からは決して見えない、それぞれの裏側だった、というだけのこと


ただ、それだけのことだった…


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