伊弉諾 雫 作品集

散文詩・エッセイ・批評・考察・論評

ソラノイロ

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本当の空の色を知りたい


空の輝きの秘密を知りたい





快適な牢獄の隙間に、燃える風の匂いを感じて


届かない天窓に、手を伸ばしてみる


この部屋の住人は、湿った空気に脳をやられて


涎を垂らして恍惚な表情を浮かべる、盲いた囚人





爛れた肉を撒き散らしながら、


「ボクハ、マトモサ」と笑う


「オマエハ、クルッテイル」と嘆く



「ワタシハ、フツウヨ」と笑う


「アナタハ、カワイソウネ」と慰める



「イッショニ、イイ夢、ミヨウヨ」と


腐臭に満ちた声で誘う





俺も腐っていきながら、目だけは必死に凝らしていた


天窓の先、空の青さの向こう側で


透明が俺が微笑んでいた




何故、俺は微笑んでいる?


俺は、何を見て微笑んでいる?


そこで俺は何を見ている?


「教えてくれ!!」




叫びが俺の腐肉を焼く


あの風の匂いがする


透明な俺のいる、あの場所から吹く風





吹き抜けざまに、声なき声が脳に響く


灰になるまで燃やし尽くして


空に舞って宙に融けろ




あの風は囁き続ける


本当の空の色を、探れ


空の輝きの秘密を、探れ、と。

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